About us

30年間の積み重ね

 おかげさまで、カーサブルーはウエディングやそのほかのペーパーアイテムに携わり25周年を迎えました。現在ではそれも過ぎて28年となります。不甲斐ない僕と柔和だけど芯の強い頼りになる奥さんとふたり二人三脚でがんばってきました。今では娘ふたりも大人になりました。よくやってきたな〜早いな〜〜とつくづく思います。長い道のりでしたが、まだまだ必要としてくれるみなさまのお役に立ちたいと思っています。

 二十歳くらいの頃、アメリカを大陸横断バスで一人旅をしました。僕はジャズが好きで、最終地点のニューヨークにあるスイートベイジルというジャズクラブへ足を運びました。感動し、おもわずミュージシャンの控室にとびこみました。拙い英語で気持ちを伝えると、ショップカードにサインをしてくれました。今でも机の引き出しに大切にしまってあります。そのカードを見るたびに、若かった頃の思い出が蘇ります。疲れたときや行き詰まったときは、そのカードが背中を押してくれます。

 そのカードは汚れてしまって、かつてのような紙の張りもなく、角も丸くなってしまい、インキもかすれていますが、それでも大切なものです。長い時間の経過とともに、紙にも不思議な味わいがでてくるものですよね。新しい紙の初々しい匂いや質感はもうありません。それでも、そんな感情を抱かせてくれる質感、この手触り。大切なカードです。

活版印刷との出会い、手漉き ハンドメイドペーパー との出会い

 そんなとき出会ったのが、ハンドメイドペーパー、手漉きの紙たちです。その魅力はなんといっても、機械では作れないあたたかみのある質感と手触り、ぬくもりです。
なんとしても自分でつくりたいと、紙の製造をスタートし、何度も挫折を繰り返し、試行錯誤しながらの連続でしたが、あれから長い年月が過ぎ、今では自分が好きな風合いの紙を使って印刷できることが、最高にうれしいです。
印刷は活版印刷という手法で製作しています。版にインキをつけて、古い手動の機械でゆっくりと一枚一枚印刷していきます。中世にヨーロッパで生まれた活版印刷技術とハンドメイドペーパーの組み合わせは、五感を刺激する印刷そのものです。

 僕は、そんなぬくもりのある質感をなによりも大切にしたいと思います。背中を押してくれたり、元気をくれたり。このコロナ禍によって、世の中はさらにデジタル化がすすむでしょう。それが今の潮流です。でも、僕は質感にこだわりたいです。ぬくもりのある紙をつくりたいです。そして、その紙にゆっくりと一枚一枚印刷をする。加工をする。

 その紙たちは、もしかしたら遠いところで、僕が若い頃に手にとったように、見ず知らずの人に届くのかもしれない。